19世紀中期から後期にわたって欧米諸国で実用化された鉄筋コンクリート構造[1]
は、現在、私達の生活基盤を形成する代表的かつ重要な構造形式の一つとなってい
る。鉄筋コンクリートによって建造された構造物は、いわゆる社会資本(インフラ
ストラクチャー)の一部として整備・蓄積され、今世紀における代表的な構造物と
して機能している。これは欧米諸国にとどまらず、我国をはじめ多くの国で用いら
れ、土木・建築のダム・橋梁や建築物から、LNGタンク・海洋構造物・原子力発電所
など大型構造物にも及び、その構造形式が多様化・複雑化していることも近年の特
徴で、社会的な要求度も増すばかりである。
永く厳しい自然環境の中で、構造物が所要の使用性・耐久性を維持し、公共の用
に供し続けるには、材料・施工・設計などあらゆる観点からの配慮が肝要で、これ
まで多くの研究者・技術者の努力とその積重ねにより今日に至っている。なかでも
構造解析・設計技術は、構造物建造の前準備として主要な役割を果たしてきたとい
える。しかし、時には大地震による震害や早期劣化などの手痛い経験をし、未だ不
十分なる点を思い知らされることもあった。このため、これまでの耐力算定にとど
まらず、耐震解析、疲労解析など、より高度で入念な解析技術および設計手法の合
理化が要求される。
鉄筋コンクリートは、コンクリート材料に鉄筋棒鋼を埋設した複合構造材料であ
る。コンクリートは圧縮には強いが引張に弱く、一方、鉄筋は高引張強度を持ち、
コンクリートの低引張強度を補完している。さらには、鉄筋は、圧縮領域の補強材
(この場合圧縮鉄筋として)やコンクリートの拘束材(この場合引張鉄筋として)
としても機能している。
言換えると、鉄筋コンクリートは、構成材料である鉄筋とコンクリートの長所を
活かし、欠点を補完し合う優れた複合材料であると言える。コンクリートの特徴と
してまず挙げられるのは、高圧縮強度・低引張強度の準脆性材料であることで、構
造部材として単一で機能することは少ない。一方、鉄筋棒鋼は比較的高強度の延性
材料であるが、それのみで部材を形成することは得策ではなく、座屈や腐食の心配
がある。
そこで、鉄筋コンクリートの登場となるが、これは、鋼材(鉄筋棒鋼)+コンク
リートの共同体であるが、両者の単なる組合わせではなく、それ以上の相乗効果を
発揮していることを強調したい。これは、コンクリートの立場からみれば、@圧縮
域における靭性と強度の改善、A引張脆性破壊の防止とひび割れ制御であり、鋼材
からみれば、B棒状部材の座屈回避、C腐食防止などが主なものとして挙げられる。
さらに、詳しく説明すると
鉄筋コンクリートの特徴と構造
@コンクリート構造物の種類と特徴
A鉄筋コンクリートの特徴
Bコンクリート構造物の3要素
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