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鉄筋コンクリートとは:
  鉄筋コンクリートの特徴と構造
  @コンクリート構造物の種類と特徴
  A鉄筋コンクリートの特徴
  Bコンクリート構造物の3要素

@コンクリート構造物の種類と特徴

・コンクリート系部材の種類
 コンクリート系部材は、一般にコンクリート材料にある補強材(reinforcement)もしくは初期応力(pre-stress)を施することにより構造部材として機能する。これらは一般に鉄筋コンクリート(reinforced concrete)、プレストレストコンクリート(prestressed concrete)、鉄骨コンクリート(steel-framed concrete)の三者に大別することができる(図1)。とくに最初の2つの英語は直訳すると、
 reinforced concrete :補強されたコンクリート
 prestressed concrete:あらかじめ応力が導入されたコンクリート
となるが、それぞれ頭文字をとって、RC、PCの略称のもと土木・建築技術者にはなじみが深い。
 また、これらの中間的部材(とくにPRC、SRC)についても古くから研究され、既に実用にも供されている。

さらに近年、新たな組合せによる複合構造・混合構造が開発され、主として橋梁に用いられている[2]
これら3形式のうち、土木構造物、建築構造物とも鉄筋コンクリートとして用いられることが多く、本書で取り扱う対象である。
コンクリート内部では、いろいろな形状の鉄筋がに配金されている。
これらは外的な荷重作用に抵抗するため合理的に設計・配筋されたもので、その位置、方向、量(断面積)、定着の仕方などが重要である。鉄筋コンクリートの設計とは、狭い意味ではコンクリートの断面寸法と鉄筋の量と配置を決定する事である。

・コンクリート構造物の形式
コンクリート構造物は、その造形が比較的自由であることから多くの構造形式が誕生し、近年その多様化は著しい。これらを列挙すると表1のようにまとめることができる。
これらは従来からある柱・梁部材の単軸棒部材から始まり、スラブ・平板などの平面部材、さらに平面部材または曲面部材で構成される立体構造、および重力式ダムで代表される3次元的な中実構造(マスコンクリート)など多岐にわたり、その適用範囲も広い。
また、大型化ということも近年の傾向である。しかし、これを大まかに見ると伝統的な柱・梁部材(棒部材)と3次元中実構造(これは無筋コンクリートであることが多い)、および平面部材およびほぼ平面と近似し得る曲面部材もしくはその集合体に分類することができる。すなわち、部材様式が複雑化する中で、その構造効率、施工性、経済性、外観などを勘案すると、自ら様式は集約されたものとなる。
さらに近年多くの大型プロジェクトが相継いで計画・実施され、コンクリート構造物がその中心となっていることは記憶に新しく、過去15年間は土木・建築両分野にとって特筆すべき発展期でもあった。なかでも、原子力格納容器(CCV)、LNG地下タンク、PC卵型消化槽は、軸対称シェルの華麗で重厚な容姿を形成し、コンクリート構造物の新しい可能性を具現化したものであった。橋梁上部工についてみプレストレストコンクリート技術を中心に、PC斜張橋、外ケーブル方式など多くの革新的かつ合理的な試みが実現している[3] 。さらには地下発電所、大口径シールドトンネルなどの地下構造物の建設、ならびに沈埋トンネルや資源開発用プラットフォームに見られる新しい海洋構造物に出現は、限られた国土に新たなるフロンティアを提供するものであったといえる。

表1 RC構造部材の構造形式と適用例
分類 構造形式 適用例
棒部材 梁、柱、ラーメン 桁橋、建屋に大梁・少梁、ラーメン構造、RC短柱・長柱、RC・PC杭
平面部材 スラブ、平板、壁
ディープビーム
床スラブ、耐震壁(壁式構造)、連続地中壁
立体折板構造 ボックス壁 原子炉建屋、箱桁橋、海上プラットフォーム基礎
立体曲面構造 シェル、中空円筒 RCシェル、アーチダム、HP冷却塔、卵型消化槽、原子力格納容器、PC水槽、サイロ、LNGタンク
3次元中実構造 マスコンクリート 重力式ダム、基礎フ−チング、アンカレイジ

一方、建築構造物に目を転ずると、コンクリート構造物が積極的に用いられてきたが、とくに鉄筋コンクリートのラーメン構造または壁式構造による中高層建屋の設計・建設は、耐震性・構造効率・経済性からの要請に応えるもので、鉄筋コンクリートの長所を活かしたものである。ここでは高強度コンクリートと高強度鉄筋を駆使し[4] 、高度な構造・耐震解析技術とも併せ、多くの鉄筋コンクリート高層建築を実現させようとしている。
 さらには、宇宙空間への可能性も模索されている。とくにコンクリート構造による月面基地建設の構想は、現地での材料調達から設計・施工・コストなど既に多くの具体的な検討がなされている[5]
 また、新素材を用いた繊維補強材の活用やコンクリートの高性能化・多様化(用・強・美の追求)が昨今のトピック[6] であり、周囲の環境や景観を配慮したコンクリート構造物の設計[7] がこれからの課題として論議されていることを付け加えたい。
このように100余年の歴史をもつコンクリート構造物は、新たなる構造形式を次々に産出し、材料や工法のイノベーションとも相まって、ますますその適用範囲を広げ、我国のインフラ整備を推進している。

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