質問掲示板 授業大質問コーナー
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2000年度前期

15 質問者 9817060
賎川 泰久
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
7月10日のスライドの授業  
質問内容 地震動の所で黒板にF=kWとあったが加速度になぜ自重を使うのか 授業では,あまり理解できなかったのでもう少し詳しく教えてほし い。
回答;
質量mの物体は,もともと, W=mg なる自重を鉛直方向に生じている(地球上に存在する限り).
この質点が,水平方向にαの加速度を受ければ,今度はその方向に, F=mα なる慣性力(この場合,地震力)が生じる. 従って,このふたつの力の比を震度kとして,k=F/Wと定義すれば, 慣性力(地震力)の大きさを, F=kW のように,自重との比で簡便に,しかも客観的に表すことができる. さらには,この震度は, k=mα/mg=α/g のようにも表され,慣性力(地震力)の程度の指標となる. 詳しくは,「紅白の教科書」の11-3:耐震設計の手順 を参照されたい.

 

14 質問者 9717039
コン研子
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
7/10のスライド授業にて (鉄筋コンクリート構造物の耐震設計)  
質問内容 授業で学習した復元力についてでてきたのですが、 1:これはもともとどういうもので, 2:どういった場合に復元力を利用するのですか? 3:また、鉄筋コンクリート橋脚における復元力の特性はなんです

回答;
質問の内容を3つに分けました.

1.復元力とは,質点が原点から移動したとき,もとに戻ろうとする力のことで, 構造物が力学的に具備している基本的な性質である. まづは,弾性バネのような,「伸ばせば伸ばすほど,その逆方向に戻そうとする 力(復元力)」を思い浮かべてもらいたい.

2.復元力は,通例の構造物が持っている力学的な性質で,質点の運動方程式に は,必要不可欠の項になる. (物理的にも,復元力が存在しなければ,変位した構造物がそのままもとに戻ら なくなる). 「紅白の教科書11章:11-1構造物の応答」にて示したように,運動方程式の左辺 3項(復元力の項,粘性項,加速度項)を構成する.

3.以上が一般的な事柄で,鉄筋コンクリート部材を取り扱う場合,鉄筋コンク リート特有の復元力特性を取り扱う必要がある. これは,ひび割れや鉄筋降伏などの材料の非線型特性によるもので,比較的複雑 な性状を呈する.また,地震時の挙動を取り扱うため,繰返し特性(除荷,再々 載荷などの履歴特性)を的確にモデル化する必要がある. (詳しくは,「教科書11-2:鉄筋コンクリート構造物の挙動」を参照されたい)

 

13 質問者 9817053
sakata
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
鉄筋コンクリートの解析と設計 例題11.2 (RCスラブの疲労設計)
質問内容 1:安全性の照査で設計繰り返し回数200万回に対しての安全性を求めいますが, なぜ200万回なのですか。
2:また,200万回というのはどのくらいの期間を想定したものですか。

回答;
回答1: 質問にある,設計繰り返し回数200万回というのは,練習問題の例として,とりあ げた繰返し回数であり,とくに意味はない.ただし,通常の土木構造物の疲労設 計に際して,200万回という回数は,それほど, 大きい回数でもなく,少ない回数でもなく,構造物が供用中に受けるおおよそ の回数と考えてもらいたい. また,疲労荷重を等価な振幅(等価荷重)で考える場合(文末‘注’参照),設計繰返し回数は この等価荷重とをセットで考える必要がある.

回答2: 構造物に作用する繰返し回数は, 「1年間の繰返し回数*供用年数」 ということになる.すなわち,その構造物が受ける疲労作用の頻度(交通の往来 頻度,波浪の作用回数など)および構造物が使われる年数(供用年数)の2つで 決まるということ.具体的には,構造物の種別と建設地点ごとに予測し,決定す る必要がある. ただし,交通量が予測値(設計値)を上回ったり,上載荷重が増加したりするこ とにより,注意が必要である.これは,疲労限界状態が不利になることを意味し, 補修/補強が必要なることが少なくない.

注: 疲労荷重は大小ランダムな作用をするため,これを一定の疲労振幅(等価荷重)に 置き換えるときがあり,これを等価疲労荷重と呼ぶ.また,これをもとに算出さ れた繰返し回数を等価繰返し回数と呼ぶ. (グレイの教科書,「11-3:線形被害則」を参照されたし)

 

12 質問者 9817114
すもももももも桃のうち?
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
5章:5-2 中心軸圧縮部材の耐荷力 5−2−4 標準示方書による設計法
質問内容 あまりにも鉄筋コンクリートについて無知なので、 こんな質問してよいのかすごく不安なんですが、 1:設計断面耐力N'oudを求めるのに(1)帯鉄筋柱と(2)らせん鉄筋柱と、 違う式でなっていて強度的に、らせん鉄筋柱が強いのがなんとなくわかります。 2:でも先生はらせん鉄筋柱の設計断面耐力についてはあまり詳しく説明してな いので、このらせん鉄筋柱は一般的に用いられていないのでしょうか。それとも ただ難しいだけ? 3:あと、どういった構造物でこのふたつの鉄筋柱が使い分けられてるのでしょ うか?

回答;
回答1: 一般に,らせん鉄筋柱の方は,横補強筋を連続して巻き付けてあり,拘束効果 ( Confined Concrete)が大きいことが知られている. 教科書の図5-5(p.100)からわかるように,らせん鉄筋柱は帯鉄筋柱に比べて, 靭性(変形能力)が著しい.このことは図中の縦軸で表される耐荷力については, 両形式に関してあまり違いがなく,横軸の変形能力(靭性)に顕著な違いがある ということである.

回答2: らせん鉄筋は,柱断面の形状の制約や施工上の煩雑さもあり,帯鉄筋柱がより一 般的な,鉄筋コンクリート柱と言える.このため,授業として,まづは,帯鉄筋 柱をとりあげた次第であり.遠慮せず両方勉強してもらいたい.

回答3: さて,質問の使い分けであるが,一般論としての回答は難しい.近年,このよう な鉄筋コンクリート柱のほかにも, 鉄骨鉄筋コンクリートや合成構造(鋼管コンクリート構造)など, 新たな柱の形式が研究/施工されており,これらを含めて,利害得失/経済性/施工性などから, 総合的に判断する必要ある.

 

11 質問者 9717027
金子 英介
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
P.242 例題11.2 RCスラブの疲労設計  
質問内容 安全性の照査の時、コンクリート・引張鉄筋とも断面・応力レベルでは 値が等しくなるのに、疲労回数ではなぜ値が違うのか。また、その違いが与える 影響はないのか。
(吉川注釈:ここでの,等しいというのは,照査式(11.25),(11.26),(11.27)の算 定結果が同じになるという意味です)
回答;
例題の解答例うち付表11-2をみると,疲労に関する安全性の照査が,3種類なさ れていることがわかる.
すなわち, @応力レベルでの照査 A断面力レベルでの照査 B疲労回数/疲労寿命による照査 の3種類である(ただし,土木学会の現行示方書では,B回数は用いられていない ことを再度記す).
これは,3章p.51〜,および11章pp.240〜241に詳述している ので,再度確認されたい.
質問に対する回答ですが,
これら3種類は,もともと別物であるので,@〜Bの照 査結果式(11.25),(11.26),(11.27)の算定結果)は異なるのが当り前で,たまた ま,@応力レベルとA断面力レベルでの照査結果が同じになったと考えたらどう か.
この「たまたま」というのは,授業で説明したとおり, 鉄筋応力,コンクリート応力ともに,曲げモーメントMと線形関係になっている ためである.
これは,p.242の下から4行目の2式,または式(4.29)〜 (4.31)(4章:曲げを受 ける部材)から,容易に判断できるので,確かめてもらいたい.
さて,最後に, 「また、その違いが与える影響はないのか」 という質問だが(質問の趣旨がいまいち理解しにくいが), 返答に窮する質問で,大変厳しいところを突かれた. (ポイント5をあげたいところだが).
もともと,上記に示した@〜Bの照査式が,疲労限界状態に対して, 満足すればOK,満足しなければダメということしか判断できず,数値的な意味 がなお不明であり,照査式自体の工学的な吟味が必要となる.
このような反省から,現在,性能照査型設計法(Performence-based Design)が, 提案されており,土木学会(とくに耐震設計)では大きな論点になっている.
話はそれたが,現行設計手法(限界状態設計法)が不適切ということではなく, さらに合理的な設計手法を模索している ということである.



10 質問者 9817120
柚木裕朗
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
耐震設計と耐震解析: スライドの授業の内容から  
質問内容 阪神淡路大震災をきっかけに、鉄筋コンクリートで作られた橋の桁を補強するために、 まわりにカーボンシートでできた補強材を巻いているというものがありましたが、
もしあのカーボンの補強材が無限に強いものだったとして、橋脚の中心軸方向に 荷重を限りなくかけていった場合、中のコンクリートは圧壊するのでしょうか。
回答;
質問の趣旨は, 「周辺(横方向)が完全に剛体で拘束されていたら,中のコンクリートは,どん な荷重に対しても,壊れないのではないか」 ということだろう.いいところに気が付いた.
例えば,完全拘束であれば,中身がコンニャクや発泡スチロールでも相当耐力があるような気がする. 全くそのとおりである. 周辺拘束によって相当の耐力増加があることは事実で,これまで古くから実験的 に証明されている.ただし,完全剛体による実験は不可能であり,いつかは破壊 するであろうが,どれだけ強度増加するかはわからない.
これは,3軸(圧縮)応力下の実験で,土や岩盤でもなされている.
理論的に説明すると,静水圧依存性(Drucker-Prager型構成則)といって,周辺 の圧縮拘束により,その材料の強度/剛性が増大するということであり,コンクリー トや地盤材料では,大切な力学的特性となっている.
このような,拘束効果は柱の場合、とくに大切な特性で,我がコンクリート研究室 の研究課題となっている. また,このような3次元応力下の性質は,「2章:2-1-3多軸応力とポアソン比」に 説明されているので,読んでもらいたい.とくに,例題2.2(p.18〜19)がまさし く,周辺拘束の力学を弾性解析で示したもので、付図2-3がわかりやすい.熟読され たい.
本質問のような素朴な疑問は,力学的センスを養う上で非常に大切と思われる. 大歓迎である.



9 質問者 9817060
ごんべいさん
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
7月3日の阪神大震災のスライドの授業  
質問内容 破壊の形状を見ただけで曲げ破壊とせん断破壊の判断の仕方と, 左右どちらの方向から力がかかっているかの判断の仕方が解りま せん。
回答;
回答#1: 破壊形式(曲げ破壊 VS.せん断破壊)
・曲げ破壊:繰返しの曲げモーメントの作用により,側面のコンクリートがひび 割れ(引張サイド:下縁側)および剥落(圧縮サイド:上縁側)する.さらに, 大きい曲げモーメントが作用すると,主鉄筋が降伏し,変形が増大する.さらに は,圧縮側の鉄筋が座屈し,引張側が破断,コアコンクリートの破壊に至ると, 復旧不可能な大損傷となる.
・せん断破壊:曲げモーメントにより,当初は(上下縁に)曲げひび割れが先行 するが,せん断力により,腹部(ウェッブ)に斜めひび割れが生じる.せん断ひ び割れの発生後,帯鉄筋(せん断補強筋)が不足している場合,そのまま,帯鉄 筋の降伏により,せん断破壊に至ることが多い.せん断破壊,ほとんど変形能力 がなく,急激に(脆性的に)発生し,倒壊することもある,危険な破壊形式であ る.
回答#2:破壊の方向
地震力は,左右の繰返し荷重であるので,右からの力か,左からの力か,と考え る必要はない. ただし,授業で話したとおり,橋梁(鉄道橋,道路橋)の下部工となる橋脚の場 合,橋軸方向か,橋軸直交方向,あるいは両方向か,または,上下動によって破 壊したかをかんがえることは重要である.



8 質問者 9817002
C は S よりつよし!
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
5章:軸力と曲げを受ける部材: 破壊包絡線(相互作用図)について  
質問内容 破壊包絡線を用いることによって(但し、様々な条件によっても変わってくるのだが)、 この構造が「鉄筋降伏先行型 or コンクリート圧壊型」なのかが判断できます が、
これは橋であれ家であれ、どんな構造物にでも適用することはできるのでし ょうか?
回答;
まず,回答#1:
「鉄筋降伏先行型 or コンクリート圧壊型」 ということは,あまり重要ではなく,コンクリート圧壊型でも構わない.もし くは避けることができない.(この点が,純曲げをうける場合と異なる)
大切なことは,設計断面力がこの 破壊包絡線(相互作用図)の内側にあるかどうかということ.
・設計断面力が内側にある:設計上OK.
・設計断面力が外側にある:設計上,認められない. いうことになる.
回答#2:
「どんな構造物にでも適用できるのか?」: 質問に対する,直接の答は,「YES:そのとおり」ということになる. ただし,
1.この破壊包絡線は,部材の断面解析であるので,橋であれ,建物であれ,部 材である柱や梁のある設計断面に対して検討していることになる.
2.設計書として,このような破壊包絡線(相互作用図)をいちいち作図して いるとは限らず,基本的には式(5.59)p.118のような照査式を適用することにな る.



7 質問者 9817005
鉄よりコンクリートかしら
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
7/3の授業から (鉄筋橋脚の震害と耐震設計)
質問内容 震害を受けた鉄筋コンクリート橋脚では, 鉄筋降伏は「切り傷「ということで,簡単に修復できると言っていましたが,ど のように修復するのでしょうか?  
取り壊さないとなおせない気がする。
また,  鉄筋コンクリートのせん断破壊が土のせん断破壊とほとんど一緒の形をしていて驚いた。
回答;
*****回答その1:
大きな地震荷重を受けた鉄筋コンクリート橋脚は,繰り返し大変形により,相当 の被害を被ることが,先の阪神淡路大震災に経験した. 主鉄筋が引張降伏に及ぶこともあり,これは,せん断破壊や主鉄筋の座屈,コア コンクリートの崩壊などの重大な震害に比べれば,まだ軽症であり,その意味で 「切り傷程度」と表現した.
震災後の処理に際しては,高度な技術的判断を必要とするが,例を挙げると,
1.主鉄筋の座屈は,鉄筋の交換が必要であり,せん断破壊したもの,倒壊した ものは,撤去して新設とすることが多い.
2.質問のように,主鉄筋の降伏を受けても,外見の損傷が軽微であれば,その まま補修後再使用ということになる.(ただ,主鉄筋が降伏したかどうか,どの 程度まで塑性化したかは,外見からでは判断できないことが多い)
3.この際,橋脚全体の残留変位の引き戻し,かぶりコンクリートやひび割れの 補修はしますが,鉄筋そのものはそのまま使います.
4.ただ,このような補修で再使用が可能ですが,同じ規模の地震が来襲したら, 同程度もしくはさらに深刻な震害を被ることになる.このため,通例は,耐震補 強を行うことになり,鉄筋コンクリート巻きたて,鋼板による巻きたてなど,主 として橋脚の外周を補強することになる.
5.阪神淡路大震災の後は,日本全土で耐震補強が行われ,折りに触れよく見て もらいたい. 在来鉄道,新幹線,高速道路などが見所です.
*****回答その2:
「鉄筋コンクリートのせん断破壊が土のせん断破壊とほとんど一緒の形をしてい て驚いた」については,いいところに気が付いた.
コンクリートは,低引張強度の準脆性材料ということで,土や岩盤,セラミック スなど類似点が多い.驚くことに,我々の骨や歯なども圧縮には強いがせん断 (もしくは引張力)に弱く,どちらかと言えばコンクリーの力学的特性に似てい る.
ちなみに,私の右上奥歯が 4年前に脆性破壊してしまった(割裂破壊であろうか). 原因として,(噛むことによる)繰り返しの影響もあり,疲労割裂破壊となろう か.(歯科医の説明によれば,就寝中に相当量の力で噛みしめているらしい.す なわち,上下の歯に圧縮荷重を載荷していることになる).
歯科の先生にスライ ドをとってもらったので,次回の授業で見せたい.



6 質問者 9817074
田中 康之
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
鉄筋コンクリートの解析と設計:10章」P213,6行目から11行目
<例題10.3> 等分布荷重を受けるRC梁のひび割れ 
質問内容 例題中にある(P213,6行目から11行目の) 「等分布荷重に換算する際の感覚的理解」 と言う意味がよく分かりません。
回答;
これは, 「スパンがL=4m,梁高さ35cmのRC梁に,どれだけ荷重を載せたらひび 割れが発生するか」 という問題です.
答は,p.213にあるように総重量W=1.48t を等分布にかけたら,スパン中央に ひび割れが発生するということです.
この総重量を実感しやすい例としてセメント袋(重さ40kg)に置き代えると, 37袋積み上げたことに等しい.
解説文中にある「感覚的理解」というのは,載荷重量をこの重さ40kgのセメント 袋が37袋敷詰めてある状態を想像してもらいたいということである.
もし,重さ40kgfのセメント袋が実感できなければ(見たこともさわったこともな ければ),体重 40kgの人が 37人均等に梁上面に並んでいる状態でも構わない.
このように重量をおおまかに実感することは,土木技術者としての大切な素養で あり,日頃から心掛けてもらいたい.



5 質問者 9817100
牧野 雅文
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
スライドの授業 
質問内容 阪神淡路大震災によって被災した構造物の様々な崩壊の様子をスライドで見た。
その中で多くの構造物が,地震力により曲げ破壊やせん断破壊をしていたのだが, 前期の授業では,せん断破壊は曲げ破壊より安全性の立場から望ま しくない破壊と学んだ。
スライドを見てこのことは感覚的には何と 無く分かったのであるが,理論的にはなぜなのか?
回答;
これは,「せん断破壊は曲げ破壊より望ましくない破壊」なのは,せん断破壊が靭性に乏しい破壊 (脆性的な破壊)であるためと理解してもらいたい.
整理すると,
・曲げ破壊(鉄筋降伏先行型の場合):主鉄筋(引張鉄筋)が降伏したのち,変形 が増大しても,水平荷重に対する抵抗力が低下しない(ただし,激しい繰返しにより, コアコンクリートが圧縮破壊したら,靭性は確保されない).
・せん断破壊:帯鉄筋(せん断補強筋)が降伏すると剛性が急落し,たちまち脆 性的に崩壊することが多い.

分かりやすく言うと,柱部材の場合,曲げ破壊では,(曲げ破壊の程度によるが) なんとか崩れ落ちずに上部構造を支えるが,一方,せん断破壊では,上部構造を 指示できず,そのまま崩壊する可能性が大きい.
なお,質問文にあった「スライドで感覚的になんとなく分かった」ことは,大切 なことであり,視覚的に理解することは工学でも基本的なことである.
さらには, 実験でその瞬間(せん断破壊の瞬間)を体験できるとさらによいのあるが---. 公開実験の際は,是非参加してもらいたい.


4 質問者 9817103
町田 貴宏
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
RC構造物の耐震設計に関する 7/3のスライド授業について 
質問内容 橋軸方向への力のかかり方と, 橋軸直交方向への力のかかり方はどちらの方が危険なのですか?
その理由については何かあるのですか?
回答;
「どちらが危険か」という質問の意図がわかりにくいが,質問に対する直接的な 答は,どちらも危険であるということになる.
ただ,強いて言えば,単柱形式の場合(連続橋であっても),橋軸直交方向に崩 壊するとそのまま,横倒し(横転)することがあり,被害がさらに甚大なものと なる可能性が大きい.
通例,橋軸方向と橋軸直交方向の2方向について,各々独立に耐震設計を行う. 従って,想定地震に対して両方向についての耐震性照査がなされるので,どち らも危険ではないはずであるが,過大な地震力により,比較的余裕のない方向 (もしくは両方向)に震害を被ることになり,場合に行って崩壊ということにな る.


3 質問者 9817090
西尾 成巳
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
教科書の安全性照査等の問題について 
質問内容 授業での課題(演習例題)を解答して,ときどき思うのですが,実際の設計の際 にも,例題のような照査が行われているのですか?
実感が湧いてこないので,実際はどの程度扱われているのか 教えて下さい。
回答;
質問の趣旨は, 「教科書の例題でやっていることは,本当に実社会で役立つのでしょうか?」 という,質問でしょう.大丈夫役です,将来役に立つ例題ばかりを精選しました.
とくに,土木学会コンクリート標準示方書は,プロが使う,現行の代表的な設計 基準書で折りに触れ,目を通してもらいたい.(図書館にあるので参考にされた い).

結論として,迷わず取り組んでもらいたい.もちろん,実際の構造物の設 計業務はかなり複雑で,教科書の例題はそのうちの主要部分をアレンジしたものと理解いただきたい.
さて,例題の出題内容は,直接実社会にて使うものとそのためのもう少し基本的 な演習問題に別れます.

実例を挙げて言えば, 例題6.3(pp.142 〜144)せん断耐力の算定と設計変更の場合: ここでは, @ せん断力耐力(生の値) A 設計せん断力耐力(安全率で割引いたの値) B 設計変更 のような3つの課題がある.

このうち,@とAについて言えば,例えば,設計コンサルタントとして,@の ような生の値を設計図書に記すことはなく,A(安全率を加味した耐力:設計用 値)の算出が 直接の業務となる.これは,複数個の材料安全率の導入により,如 何に,@からAに低減するかを具体的に実感するため,出題したものと理解いただきたい.
また,設計荷重の増大による設計変更はよくあること で,Bでは,設計変更のエッセンスをまとめたもので,基準値におさめるための 繰返し計算の様子がわかると思う. ただ,付表6.2(pp.144)には,照査の判定結果として,OKの場合と不可の場合が 示されているが,実際の設計業務としては,もちろんOKの照査結果のみが記さ れることになる.一方,大学の授業の課題として,OKの場合と不可の場合の両ケー スによって,照査という手順の理解に役立つと思う.


2 質問者 9817050
ごもー
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
P.242 例題11.2 : 鉄筋コンクリートスラブの疲労設計 
質問内容 6月12日の授業でよく理解できなかった所が有るんですが,
設計疲労強度 frd(fsrd)からRrdを求めるのはどの様に計算できるのでしょうか。
回答;
例題の解答例および付表11-2をよく見てもらいたい.

まず,鉄筋から決まる疲労設計を考える. (この場合,コンクリートのような3/4倍という応力調整が必要ないので,その分楽)
手順@:疲労寿命Nsを求める場合,以下の手順となる 断面力Mrd → 鉄筋応力(振幅)σsrd → 疲労寿命Ns (このときの鉄筋応力とし,σspも求めていることに注意)

手順A:今度は,設計疲労回数ndから計算する場合,逆手順となる. 設計疲労耐力Rrd ← 鉄筋疲労強度(振幅)fsrd ← 設計疲労回数nd=2百万回 (前例と同じく,鉄筋応力としσspも求めている)

上記の手順@と手順Aは,全くの逆関係となるが,名称および記号が異なるので, 注意が必要.すなわち, 鉄筋応力(振幅)σsrd は,鉄筋疲労強度(振幅)fsrd 断面力Mrd は,設計疲労耐力Rrd のように,読み替え,工学的意味も異なることを理解してもらたい.

一方,コンクリートから決まる疲労設計も全く同様で手順@と手順Aを適用するが,圧 縮コンクリートに三角形応力分布(ブロック)を用いているので,応力調整が必 要になる. すなわち,p.242, 式(11.28)を適用するもので,例題のような長方形断面では,式 (11.28a)を用い,手順@ではコンクリート応力を3/4倍,逆の手順Aで4/3倍しなけれ ばならない.


1 質問者 9717039
コン研子
質問箇所 鉄筋コンクリート(2)
教科書p50の表3-4 
質問内容 安全係数で、鉄筋よりコンクリートのほうが大きいのはなぜですか?
回答;
本コーナーへの質問どうもありがとう.なかなか質問が来ないので,心配していました. これで,平成12年度前期の鉄筋コンクリート(2)授業質問コーナー開幕です.
質問は,同表のうち,
「材料安全係数γmについて,コンクリートはγc=1.3,鋼材(鉄筋)はγs=1.0 」
であることを言っているのでしょう (この安全係数は,概ね標準的な値と言っていいでしょう.)
さて,答は単純に言うと,材料強度がばらつきが大きいほど材料安全率(安全係数)を 大きくするからである(p.49の(2)特性値と安全係数を参照). 従って,コンクリートはばらつきが大きいので,このような値1.3となっている. これは,鋼材(鉄筋)が,工場製品であるのに対して,コンクリートが現場での作業(生コンクリートの打込みと養生など)を伴うことも含まれている.
ただし,個人的な意見ではあるが,「コンクリートγc=1.3,鋼材γs=1.0」 は非常に大きな差違であり, 品質管理の良し悪し,ばらつきの程度,不確定要因など,両材料にはそれほどの違いがあるとは思えない. コンクリートの安全係数=1.3は前時代的な値であり,信用されていないという屈辱感すら感じられる.

最後に付け加えるが,一般に,対象とする項目(材料安全率では材料,部材係数では算定式) にばらつきが大きいほど(不確定なものほど),安全率は大きくなる(大きくしなければならない). すなわち,不安/心配/もしも/懸念が大きいほど,真の値に対して設計用値を小さくするのは, 当然のことであると言える.このことは,たとえば,確率分布関数の標準偏差(または分散)によって, 定量的に説明することができる. このことは,One Point:コンクリート強度のばらつきと品質管理(p.29〜30)に詳しく説明してあるので, 熟読されたい.これは,設計上の安全係数ではなく,配合強度における割増し率のことを述べているもので,割増し係数が変動係数と危険率で表されていること示している.確認されたい.





過去の回答集

2003前期
0件
2003後期
24件
2004前期
2004後期

2001前期
10件

2001後期
16件
2002前期
10件
2002年度後期
10件
1999年度後期
26件
2000年度前期
15件
2000年度後期
#1-30
2000年度後期
#31-60